──「気持ちの肩代わり」をさせられる、不思議な現象 ──
はじめに
子どもから強い言葉をぶつけられて、深く傷ついてしまう。
頭では理解しようとしても、
「どうして、ここまで言われなければならないのか」
「自分がとても無力に思えてしまう」
そんな体験をしている親御さんは、少なくありません。
こうしたとき、背景で起きている可能性があるのが、
「投影」や「投影同一化」と呼ばれる心の働きです。
投影とは何か
投影は、心理学で知られている心の防衛機制の一つです。
とても簡単に言えば、
自分の中にあるつらさや不安を、「相手のもの」として捉える
という現象です。
たとえば、
自分の中に理由の分からない不安やイライラがあるとき、
それを
「相手が怒っている」
「相手が不機嫌だ」
と感じてしまうことなどです。
この段階では、
不安はまだ自分の内側にあり、ただ見え方がずれている
という状態です。
投影の先にある「同一化」
投影がさらに進むと、投影同一化と呼ばれる状態になります。
たとえば、こちらが怒っても不機嫌でもないのに、
「今、怒ってるでしょ?」
「絶対に不機嫌だよね」
と繰り返し言われることがあります。
その言葉に揺さぶられ、
「怒ってないって言ってるでしょう!」
と感情が動いた瞬間、
相手は
「ほら、やっぱり怒ってた」
と安心したように見えることがあります。
ここで起きているのは、
相手の中にあった”揺れ”が、こちらに移され、実際に感じさせられている
という現象です。
これが「投影同一化」です。
本当に揺れていたのは、言葉を投げた本人。
けれど、その不安を言葉にできず、
一人で抱えきれなかったため、
相手を揺らすことで
「不安なのは相手だった」
という形に置き換え、
ねじれた安心感を得ようとします。
投影同一化は「悪いもの」?
投影同一化は、決して珍しいものではありません。
強い不安の中で、
他に使える方法がないとき、
心が壊れないために必要になることもある
と考えられています。
そのため心理学では、
「未熟」と表現されることはあっても、
「間違い」と断定されることはありません。
ただし、これが続きすぎると、
周囲は消耗し、関係も壊れやすくなってしまいます。
思春期 × 投影同一化
思春期は、投影同一化が起きやすい条件がそろう時期です。
- 自我が急激に大きくなる
- けれど現実的な力はまだ弱い
- 外からの期待や圧力は増える
- 依存と自立が同時に存在する
精神分析の分野では、
思春期と投影同一化の結びつきは、よく知られたテーマです。
不登校や登校しぶりの研究でも、自然に登場します。
子どもは、学校や社会で味わった
無力感、敗北感、自己否定を、
家庭に持ち帰ります。
世界で傷ついた。
けれど、世界には返せない。
だから、一番近い安全基地に投げ返す。
ここがとても大切な点です。
安全基地だから、やる。
壊れないと信じている相手だから、向ける。
攻撃は、関係を壊す行為ではなく、
関係を保つための一つの形であることもあります。
「一番大事な親に、一番ひどいことを言う」
この現象は、世界的にも共有されている理解です。
すべてを受け取らなくていい
だからといって、
すべてを我慢し、受け止め続ける必要はありません。
別の記事でもお伝えしていますが、
「受け取らない力」はとても重要です。
ただ、いがぐりの中身に、
「その子が外で味わってきた苦しみ」が
入っているかもしれない。
そういう視点を持つことが、
あなた自身の傷つきを、少し軽くすることがあります。
いま、あなたが感じているその痛みや無力感 ──
それは本当に、あなたのものですか?
ここに灯した言葉を読んで、
もう少し火にあたっていこうと思われたら、
こちらへ…

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