── 言葉が生んだ誤解と、診断名の混乱 ──
はじめに
ASD(自閉スペクトラム症)という言葉を聞いて、
どんなイメージが浮かぶでしょうか。
・人に興味がない
・自分の世界に閉じこもっている
・空気が読めない
・感情が薄い
そんな印象を持っている人も、少なくないかもしれません。
でも──
それらは本当に、ASDの本質を表しているのでしょうか。
「自閉」という言葉が生んだ誤解
まず、はっきりさせておきたいことがあります。
ASDという診断名に含まれる「自閉」という言葉は、
内面の状態を正確に言い表した言葉ではありません。
この言葉はもともと、
「外から見た行動の特徴」をもとに名付けられたものです。
・目が合わない
・会話が噛み合わない
・集団に入らない
・独特のこだわりがある
こうした“外に現れる様子”が、
「閉じている」「こもっている」ように見えた。
その結果、「自閉」という名前が使われるようになりました。
けれど、
行動が閉じて見えることと、
内側の関心や感受性が低いことは、
まったく別の話です。
このズレが、ASDをめぐる多くの誤解の出発点になっています。
診断名がややこしく見える理由
ASDについて調べていると、
こんな声をよく聞きます。
「昔はアスペルガーって言われた」
「今はASDって診断された」
「診断書には広汎性発達障害って書いてある」
一体どれが正しいのか、混乱しますよね。
これは、
診断の考え方(DSM)と、
医療書類で使われる病名(ICD)が違う
という事情によるものです。
・診断の枠組みとしては、ASDにまとめられている
・一方で、日本の医療現場では、
ICDの都合で「広汎性発達障害」という表記が
今も使われることがある
つまり、
名前が違って見えても、
中身は同じ人の話
というケース
が、実際には珍しくありません。
診断名が変わったからといって、
本人の感じ方や困りごとが、
ある日突然別物になるわけではないのです。
この記事で扱うASDの範囲について
ここで、ひとつ大切な整理をしておきます。
「自閉スペクトラム症(ASD)」という診断には、
知的発達の遅れを明確に伴う、
いわゆる古典的な自閉症も含まれます。
ただし、この記事シリーズでは、
知的発達が概ね保たれているASD
つまり「古典的な自閉症”以外の”ASD」を、
主な対象として扱います。
これは、優劣の話ではありません。
困りごとの質も、
必要な支援の方向性も、
かなり異なるためです。
同じ枠に無理に押し込めると、
どちらの理解も浅くなってしまいます。
ここから先で扱うこと
ASDは、「人に関心がない特性」ではありません。
世界に対して開きすぎてしまう特性が、
「結果として“閉じた行動”を生む」状態群
それが、ここで扱うASDです。
では、彼らの「内側」では実際に何が起きているのでしょう?
次の記事では、この特性について少し詳しくお話しします。
ここに灯した言葉を読んで、
もう少し火にあたっていこうと思われたら、
こちらへ…

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